発起人は友人S

おじいちゃんはSEM(走査型電子顕微鏡)で毎日向何かを見ている。
一日のほとんどをSEMに費やし、SEMに向かう。
お嫁さんが、孫が「ご飯だよ」と呼びに来てもおじいちゃんは完全シカト。

そんなおじいちゃんが老いのためか亡くなってしまう。
家族の誰も使わないSEM。
「俺が死んだら一緒に焼いてくれ」と入れても棺に入らないサイズのSEM。
押し入れをカスタマイズしてできたSEMスペースを見て
途方に暮れていた家族の元に大学の教授たちがやってきた。
「おじいさんのSEMを買い取らせていただきませんか？」と。

正直仏壇買う金でSEMを買ってしまった為、おじいちゃんの家は仏壇が無かった。
SEMはおじいちゃんが仏壇コーナーの横にあった機材ブースで一目ぼれし買ったものだった。
おばあちゃんはその日むちゃくちゃ怒っていた。
家族にとって仏壇に還元したいものナンバーワンだったSEMは無事大学に買い取ってもらえた。
そのお金で仏壇も買えた、結構いいのが買えた。

しかし事件は起こる。
とある研究室の学生が夜遅くまで分析機器に向かっていた。
ぼんやりSEMの方をみると電源を切ったはずのSEMが動いている。
しかもフォーカスがばっちり取れている。
学生は段々恐ろしくなり、すぐ分析機器を出来る限り中断し青ざめて帰宅した。
この噂はたちまち広がり実際に見た学生や研究員もでてきた。

だがそのSEMは撤去されることはなかった。
あまりにも画像が美しすぎるからだ。
今でもその現象を目の当たりにすることがあるという。
うっすら見えるおじいちゃんの笑みと共に。


と半分深夜のテンションになりかけた友人が
SEMに向かいながら話してきたおはなし。